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ドビュッシー 「映像」 ~ pf ピエール=ロラン・エマール

久しぶりにドビュッシーのCDを聴いた。
「映像」。演奏はピエール=ロラン・エマール。

私にとってドビュッシーという作曲家は
クラシック音楽に開眼させてくれた作曲家ということもあり、少々因縁深い。

私は幼年期からほぼ成人にいたるまで、
モーツアルトやベートーベンなどのドイツの古典音楽が、
あまり好きではなく、ほぼ嫌悪に近い状態だったので、
初めてドビュッシーのピアノ音楽に触れたときには、
その音の響きの美しさと、ドイツ音楽とは違う斬新な和音進行に
心を奪われんばかりに驚き、感動した。

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ドビュッシーの音楽は古典音楽とは違い、
”音の響きの自由な推移が時間を構成している”
と捉えなければ、ドビュッシーらしく響かない。
それは様々なフレーズが構造的に織り成し、
弁証法的な時間を形成する古典音楽とは
基本的に異なる音楽である。

だから、彼の音楽は、響きの質は複雑でこだわりが有るけど、
フレーズ構造は以外にシンプルだったりする。

「映像」はそんなドビュッシーの音楽の中でも、
私のもっともお気に入りの作品であった。

実はエマールの演奏、10年ぐらい前に京都で聴いたことがある。
「フランス音楽アカデミー・アンサンブル スペシャルコンサート」
というコンサートで、”京都フランスアカデミー”の講師として来日した折の、
講師陣によるスペシャルコンサートなのであるが、
このとき、彼はセルメットというピアニストと
2台ピアノによるラヴェルの「ラ・ヴァルス」を演奏した。

この演奏が本当に素晴らしかった。

弦が切れるかと思うほど、激しく情熱的な演奏だったけど、
その激しさが、ラベルの美しい響きを損なうことなく、
その美しい音楽とエネルギーが高度にバランスした
素晴らしい演奏だった。

彼は、当時、名前が知られているピアニストではなかったけれど、
このようなレベルの高い、あまり知られていない演奏家がいることを知り
ヨーロッパの演奏家の層の厚さに、本当に驚いたのだった。

  蛇足になるが、私を含めて何人かの作曲家、作曲家の卵、作曲家ジルベール・アミ
そしてエマールとでコンサートの前に食事をしにいったのを憶えている。
彼は器用にお箸を使い、和食を舌鼓を打っていたっけ。


元来、この曲の演奏はミケランジェリの演奏が一番気に入っていて
このCDさえあれば他は要らない・・と考えるほどだったけれど、
今回、エマールの演奏を聴いて、少々考えが変わった。

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ミケランジェリは完璧主義者で、CDを聴いても
その非の打ち所がない演奏に、畏敬の念を憶えるほどである。
音は美しく磨かれ、曖昧な音は一つもなく、完全な彫刻として
音楽は我々の耳に至る。

しかしその分、他の入り込むのを拒否するかのごとく、
孤高で非情な印象も持ってしまうこともあるのも事実である。
本当に素晴らしい演奏であるけど、毎日、付き合うには少々気が重い・・・
そんな感じであろうか。

エマールの演奏には、もう少し風通しの良い雰囲気と、
開かれた音の印象がある。
決して、完成度を欠いているという意味ではない。
聴衆の方を向いた開かれた演奏、
そういっても良いかもしれない。

我が家にお気に入りのCDがまた1枚増えた。


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